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お兄ちゃんとの大切な想い出 連載 番外編

「一番身近な異性・兄弟姉妹の想い出〜Part5」「一番身近な異性・兄弟姉妹の思い出〜Part7」「お兄ちゃんとの大切な想い出」に掲載した、連載番外編を抽出したものです。(管理人:お兄ちゃん子)

番外編タイトル
夢の話チャットログ
迷子の思い出
イモ君の冒険0
イモ君の冒険1
イモ君の冒険2
イモ君の冒険3
熱でみたゆめ
妖精のわすれもの
桜の木の下で1
桜の木の下で2
桜の木の下で3

●連載番外編・夢の話チャットログ●
2001年10月20日 13時36分 初出(「一番身近な異性・兄弟姉妹の想い出〜Part5」934-940)

もう、誰も居なくなったかな?(こそこそ)

わたしが気晴らしに出入りしている、某所の秘密チャットで、
面白い夢の話があったので、コソーリ紹介します。
ここにチャットログをアップすることは、参加者全員の了解を取っています。
わたし以外の名前は伏せ字にして、一部編集しました。

α:わたしのチャット友達。実兄のδが好きな女の子。
βとγ:チャットの常連。

α :夕食後にうとうとして寝ちゃったら、変な夢見たのですよ。
α :お兄ちゃん子さんが出て来ました。
β :「変な」というのはどういう?>夢
α :戦闘機に乗ってやってきたお兄ちゃん子さん私の想像とおりの(当たり前で
すが)透明な感じの人で、
α :ピッチャーに入った水を私に差し出して、「泣いたら水分とらなくちゃ」と
言いました(笑)
β :まず、なぜ戦闘機?(笑)
γ :すごい夢だ!(笑)
α :その後、草原で体に良い薬草をいろいろ教えてくれました。
α :なぜだか私にも(笑)>βさん
γ :それでこそ夢、ってかんじの理不尽な繋がりと、本心。
β :なんか、お兄ちゃん子さんらしいといえばらしい気もする!(笑)
α :食べると尻尾が生える草も秘密で教えてくれました(笑)
γ :あずまんが見てるみたいだ(笑)
β :あずまんが大王の初夢スペシャルを超える素晴らしい夢だなぁ…(笑)。
β :あずまんがでかぶった(笑)
α :あずまんてなんですか?
γ :とってもおもしろい漫画です。>α
α :あずまんがって名前?
γ :「あずまんが大王」です。1から3巻まで発売中。
α :本屋さんで探してみます〜♪
α :夢の続きデスが、
α :急にシーンが変わって、今度はお兄ちゃん子さんの家にいるのです。
β :まだあるのか!?(笑)
γ :まだあるのね!(笑)>続き
α :はい(笑)聞いて聞いて♪
α :ここからがもっと変なんです(笑)
α :お兄ちゃん子さんちは古い木造の2階建ての一軒家で、家には誰もいません
でした。
γ :(°ー°)(。_。)(°-°)(。_。)ウンウン
α :お兄ちゃん子さんの部屋に案内されると、「ちょっとまってて」といって、
お兄ちゃん子さんは黒いオーソドックスなダイヤル式の金庫をあけました。
α :お兄ちゃん子さんは中から大事そうにそ〜っと虫かごを出しました。
γ :でも良く覚えてるネエ・・。おれなんか夢ないよう、相当濃くないかぎり、
すぐ忘れちゃう。
α :「これお兄ちゃん」。中には威嚇するカマキリがいました・・・。
α :相当濃かったです(笑)>γさん
β :前足を上げて「けしゃー」ですか……お兄ちゃん……。
β :あずまんが大王の「お父さん」を超える(笑)
α :私は「カマキリじゃん」と言いたかったのですが、失礼になるような気がし
て言えませんでした(笑)
γ :すげー(笑)
α :夢って凄いですねぇ・・・。
α :フロイト式に解読すると、どういう心理状況なのでしょうか・・・。
β :解釈を諦めて逃げる気がする……。
α :お兄ちゃん子さんて会った事ないのに、夢に出てくるって不思議。
γ :あるある。会いたい人って、ぞんざい感だけで夢に出てくるよね
β :それは、お兄ちゃん子さんが不思議なのかαが不思議なのか(笑)
α :そですね。今回落ち込んでる時、ここのチャットでお兄ちゃん子さんとお話
しして元気づけられました。
α :友達で、実の兄を好きになった人なんていないし(^^;
α :お兄ちゃん子さん自体、δになんとなく似てるし(笑)
γ :大きな支えになっただろうねー。
γ :よかったねっ!
β :お兄ちゃん子さんが、似てるんですか?
α :はい。ほんとに。>γさん
α :そなんです。なんとなくですが>βさん
γ :ちょっと失礼(?)だけど、どんなお兄ちゃんだろう、と思った(笑)
α :細かいところじゃないんですけどね。しいて言えば、クールなようでおちゃ
めで頭の回転早いところとかかな?
β :なるほど……δはお茶目なのか。
α :たまに(笑)
γ :ふうん・・・なんとなく想像してみた。
α :あんまり慌てないのが不思議です。その分我慢とか冷静にしたりとか努力し
てるんだろうなと思っちゃいます。
β :基本的にクールなんですね。
α :私はそろそろ寝なければ(笑)
お兄ちゃん子 :入室しました。
お兄ちゃん子 :こんばんは。
γ :あ、いいところに。
α :あ!
β :こんばんわです。
β :いいところというか微妙なところに(笑)
α :こんばんわ〜♪
α :微妙です(笑)
お兄ちゃん子 :あ、α来てたのね。
お兄ちゃん子 :おやすみなさい。>α
α :あ〜!お兄ちゃん子さんがせっかく来たのに〜!
お兄ちゃん子 :過去ログ読み読み……
α :もうかなり就寝モード。
お兄ちゃん子 :α! お兄ちゃんがカマキリってどういうこと!
α :わわわ〜!(笑)<過去ログ
α :え!そんなとこまで過去ログ見れちゃうデスか!
α :ひぃ〜!
α :夢なので許して下さい(゚∇゚;)
お兄ちゃん子 :明日にでも、その話、じっくり聞かせてもらいます。>α
β :もう少し前までログ保存してますが、お目にかけましょうか?(笑)
お兄ちゃん子 :逃げたら許さないよ(ぴしぴし)>α

(続きません)

●連載番外編・迷子の思い出●
2001年11月11日 15時40分 初出(「一番身近な異性・兄弟姉妹の思い出〜Part7」27-28)

1さん、スレ立てお疲れさまです。

あまり具合が良くないので、今日も連載はお休みします。
その代わり、方向音痴というか、迷子の思い出話をします。
少し頭が痛いので、取り留めのない話になると思います。

あれはわたしが小学校低学年の頃だった、と思います。
繁華街を、お兄ちゃんの後について歩いていました。
お兄ちゃんの背中を見失わないように歩くのは、わたしの足では大変でした。
でも、方向音痴のわたしには、お兄ちゃんが頼りです。

記憶がはっきりしませんけど、季節は秋か冬だったと思います。
お兄ちゃんは薄茶色のジャケットを着ていました。
わたしはその色を目印にしていました。

ふと、前を歩くお兄ちゃんが立ち止まって、振り向きました。
わたしは愕然として、立ちすくみました。
お兄ちゃんの顔が、見たこともない人の顔に変わっていました。

知らないお兄さんは、後についてくるわたしの顔を、
不思議そうに眺めました。
わたしはすっかり混乱して、急に世界が暗くなったような気がしました。

その時、後ろのほうから「○○!」と、わたしの名を呼ぶ声がしました。
お兄ちゃんの声でした。

わたしが振り返ると、お兄ちゃんが遠くで手を振っていました。
わたしはホッとして、涙が出てきました。
ダッシュして行くと、お兄ちゃんは「なにやってんだ」と言って笑いました。

お兄ちゃんは「泣くな泣くな」と言って、ハンカチを出しました。
わたしが泣きやむと、お兄ちゃんはわたしの手を握って歩きだしました。
お兄ちゃんと二人で歩くときに、手をつなぐようになったのは、
たぶんこの時からだと思います。

本当に取り留めのない話でした(笑)。それでは、また寝ます。

●連載番外編・イモ君の冒険0●
2001年12月5日 21時2分 初出(「一番身近な異性・兄弟姉妹の思い出〜Part7」913,916)

まだ88レス分も残っていますね。ちょっと勿体ないかも。
お兄ちゃんとは直接関係ないのですが、滅多に夢を見ないわたしが見た、
最長の奇妙な夢の話を埋め草にして良いでしょうか?
小3の時の夢なので、ぜんぜんエロくありませんが。

今夜はもうベッドに入りますので、夢の話はまた明日。
タイトルは「イモ君の冒険」です(謎)。

●連載番外編・イモ君の冒険1●
2001年12月7日 14時2分 初出(「一番身近な異性・兄弟姉妹の思い出〜Part7」929-934)

スレがだいぶ下がってきましたので、こっそり書いちゃいます。

「イモ君の冒険」

まえがき

この夢の話を知っているのは、わたしとお兄ちゃんだけです。
わたしが小学3年生の時に見た夢らしいです。
らしい、と曖昧なのは、わたし本人が夢の内容をすっかり忘れていたからです。

夢を見た日の朝、わたしは寝惚け眼でお兄ちゃんに、
見たばかりの夢を延々と話して聞かせ、二度寝して目覚めた時には、
夢の中身をきれいに忘れていた、というわけです。

実際はこれから話すよりもっと長い夢だったのかもしれませんが、
お兄ちゃんの口を通じた又聞きですから、今となっては真相は夢の中です。

では、はじまりはじまり。


わたしとお兄ちゃん、それに両親の4人は、
一家で大きな客船に乗って、船の旅に出ました。
着いたのは、とある異国の港です。
でも、なぜか日本語が通じました(夢ですから)。

異国の街のバザールで、お兄ちゃんといっしょに、
珍しい品々を見て歩きました。
でもその時、周りに気を取られていたわたしは、
お兄ちゃんからはぐれて迷子になってしまいました。

方向音痴のわたしが、何時間も歩いて、どうにか港に辿り着くと、
ちょうど船が出港するところでした。
遠ざかる船の舷側で、お兄ちゃんが手を振って叫んでいました。
わたしは桟橋を走ったけど、船は止まってくれませんでした。

遠ざかる船を見送った後、行き場をなくしたわたしは、
うつむいてとぼとぼとバザールへの道を戻りました。

途中の広場まで来たとき、辺りの人たちが悲鳴を上げました。
逃げまどう人々。
そこに現れたのは、なんと、身長2mに達する巨大な暴れニワトリでした!

ニワトリは、まっすぐわたし目がけて駆けてきます。
わたしは左右を見回しましたが、どこにも身を隠す場所はありません。
背中を向けても、追いつかれるのは確実です。

わたしは、真っ正面から、暴れニワトリと激突しました!
ニワトリには手がありません。
そこを狙って、わたしはニワトリの首を、渾身の力を振り絞って、
両手で締め上げました。

しかし!

ニワトリには手はなくてもくちばしがあったのです。
脳天をくちばしで激しくつつかれて、わたしは頭から血まみれになりました。
でも、薄れゆく意識の最後まで、ニワトリの首にかけた手を離しませんでした。

次に(夢の中で)意識を取り戻したのは、古ぼけた小屋の中でした。
わたしは包帯でぐるぐる巻きにされて、ベッドに寝かされていました。
枕元に、お爺さんと男の子が居ました。
2人がわたしを助けて、看病してくれていたのです。

それからわたしがベッドから起きあがれるようになるまで、
1ヶ月ほどかかりました。
そのあいだ、2人は交替でスープを飲ませてくれたり、
包帯を取り替えてくれたりしました。

わたし
「どうしてこんなに、親切にしてくださるのですか?」
お爺さん
「あなたのおかげで、暴れニワトリに小屋を壊されずに済んだ。
 みんな感謝している」

なんと、わたしはあの時、ニワトリを絞め殺していたのでした!

爺さん「いつまでもここに居ていいんだよ」
男の子「そうしなよ」
わたし「いいえ、わたしは自分の家に帰らなければなりません」

わたしは2人に旅支度を調えて貰い、自分の家探しの旅に出ます。
ここがおかしいところなんですが、自分の家とこの異国の港は、
陸続きなんです。
ただ、海を渡っていく代わりに陸路をたどって帰るには、
深い山々をいくつも越えて行かねばなりません。
つまり、陸路のほうがずっと遠回りになるわけです。

ですが、いくつもの山脈をひとりで越えるのは、あまりにも無謀でした。
途中でわたしは、水も食料も尽きて、行き倒れてしまいます(爆)。
そのわたしを助けてくれたのが、何を隠そう、物語のタイトルにもなった
「イモ君」です。

(続きはまた今度)

●連載番外編・イモ君の冒険2●
2001年12月7日 19時34分 初出(「一番身近な異性・兄弟姉妹の思い出〜Part7」936-938)

なぜ「イモ君」が「イモ君」なのかというと……
それはイモ君の顔がそのまんま、ジャガイモだったからです!

イモ君は弱ったわたしに、水と食べ物を分けてくれました。
なんと、イモ君も、わたしと同じ理由で、
わたしと同じ国(日本)を目指して旅をしていたのです。

まぁ、よく考えると、イモ君は日本人には見えませんでしたけど。
……というか、どう見ても人間とは思えません。

わたしとイモ君は、お互いに助け合って目的地を目指す誓いを立てました。
でも、程なくして、イモ君の持っていた水と食料も尽きてしまいました。

2人とももう、深い山々の中でのたれ死にするしかないのか、
と思ったその時!

向こうの山の中腹に、古い洋館が建っているのが見えました。
わたしとイモ君は這うようにして、その洋館に辿り着きました。
なんとか、水と食料とねぐらを分けてもらうためです。

ところが、いくら扉を叩いても、誰も出てきません。
そもそも、人の気配がまったくありませんでした。

こうなったら、民法かなにかの緊急避難条項の適用です。
わたしたちは、扉をぶち破ることにしました。

順番に扉に体当たりしましたが、頑丈な樫?の扉はびくともせず、
跳ね返されてしまいました。

がっかりしたわたしに、イモ君が言いました。
「2人の力を合わせるんだ!」

そこで、わたしとイモ君は、タイミングを合わせて渾身の一撃を
扉に叩きつけました。
見事、扉はまっぷたつになり、轟音と共にわたしたちは屋敷の中に
転がり込みました。

奥は真っ暗です。

暗がりの中に進み入ろうとした、その時!
人影が、カーブした階段の上から下りてきました。

わたしたちは、玄関から中に差し込む薄明かりに照らされたその姿を見て、
仰天しました。

階段を下りてきたのは、ゾンビの集団でした。

わたしとイモ君は、体の奥から未知の力を絞り出し、風よりも速く駆けて
逃げました。
この時ほどわたしが速く走れたことは、夢の中でさえ他に例がありません
(現実は鈍足)。

ところが、ゾンビたちは意外にも俊足で、2人に追いすがってきました。
山を2つ越えて、やっとゾンビたちを振り切った時には、わたしは
もう一歩も動けなくなっていました。

でも、2人とも全くの無傷というわけにはいきませんでした。
わたしをかばって、イモ君は背中にゾンビの爪を受けていたのです!

イモ君の傷は重傷でした。
わたしの手には、その傷を治す薬も、飲ませる水さえありません。

(次回で最終回)

●連載番外編・イモ君の冒険3●
2001年12月7日 21時39分 初出(「一番身近な異性・兄弟姉妹の思い出〜Part7」941-944)

わたし「イモ君! ごめんなさい。わたしのために」
イモ君「いいんだ……僕が死んだら、僕の顔を食べてくれ」
わたし「イモくーーーん!」

イモ君は、泣きわめくわたしの腕の中で、事切れました。
わたしはイモ君の遺言に従って、泣きながらイモ君の顔を食べました。
ジャガイモの味がしました。

わたしがイモ君の死骸を埋めようとすると、何もしていないのに、
イモ君の死骸(食べ残し)は、土の中に沈んで行きました。

そして、見る見るうちに緑の芽が生え、茎が伸びて、白い花が咲きました。
白い花は、丸いジャガイモに姿を変えました(←変だけど突っ込みは無用ね)

わたしは、白くて丸いジャガイモを取り、
イモ君の形見として持っていくことにしました。

次の山を越えると、そこで山脈は終わっていました。
そこには深い森が横たわっていました。

その森の木は、人間の言葉で口々に喋りあっていました。

わたし「わたしのお家はどっちですか?」
木々 「こっちだよ」「こっちだよ」「こっちだよ」…………

木霊のように声が反響して、どの木の言っていることが本当か、
わかりませんでした。

わたしは、手の中のイモ君の形見のジャガイモに尋ねました。

わたし「イモ君、教えて」

すると、ジャガイモはわたしの手の中から飛び出し、
地面をころころと転がっていきました。

わたしが走って追いかけると、ジャガイモはある太い木の根本に開いた、
人が一人通れるぐらいの大きさの穴に落ちて行きました。

わたしは迷わず、その穴に頭から飛び込みました。

その穴の向こうは、内側がつるつるで摩擦がありませんでした。
詳しく言うと、下向きに浅い角度で湾曲したU字形です。

わたしは底に向かってどんどん加速し、中間点を過ぎて上昇に転じました。
出口の穴をポンと飛び出すと、そこは見慣れた、わたしの住んでいた街の
外れでした。

わたしは帰ってきたのです。

それから、自宅に向かって歩きました。
家の前まで来ると、外にお兄ちゃんが立っていました。

わたし「おにいちゃーーーーん!」

走って行くと、お兄ちゃんがわたしを抱き上げてくれました。
結局、イモ君の形見のジャガイモは、行方が知れませんでした。
でも、わたしの命を助けて、導いてくれたイモ君のことは、
生涯忘れません。

それから、わたしは給食のジャガイモを、決して残さなくなりましたとさ。
これで、わたしの夢はお終いです。


あとがき

お兄ちゃんによると、朝起きたわたしは、寝惚けた顔で、
「おにいちゃん、ジャガイモは?ジャガイモは?」
と意味不明のことを口走っていたらしいです。

それで、わたしからこの冒険譚をすっかり聞き出すのに、
1時間以上もかかったそうです。

わたしは二度寝して、あっさり忘れてしまいましたが(爆)、
この話はお兄ちゃんに強い印象を残したらしく、ずっと後になって、
お兄ちゃんから改めて聞かせてもらいました。

補足すると、わたしは元々給食のジャガイモを残したためしがありません。
……まぁ、この話にはお兄ちゃんの創作が混じっているかもしれませんが、
筋の脈絡のなさを考えると、全部が全部創作ということもなさそうです。

それではみなさん、またどこかでお会いしましょう!

●連載番外編・熱でみたゆめ●
2002年1月11日(金)13時30分

ゆりおこされて、目がさめました。
まぶたをひらくと、お兄ちゃんがわたしの肩をゆすっています。

「どうしたの?」

「お前、すごい汗だぞ。着替えなくちゃ。気分悪くないか?」

言われてみると、たしかに下着もパジャマもぐっしょりです。

「だいじょうぶ。気分いいくらい。夢をみたの。聞いてくれる?」

気分は悪くありません。頭痛もしないし、声も出ます。鼻も通っています。

「聞くけど着替えが先だ」

お兄ちゃんは、人形を着替えさせるみたいに、わたしの服を脱がせました。
ポットのお湯でしぼったタオルで、全身をていねいにこすってくれます。

「わたし、赤ん坊みたいね」

お兄ちゃんは手を止めずに答えました。

「まぁ、似たようなモンだ」

体のすみずみまで見られているというのに、この言いぐさは傷つきます。

「ひどいな。コーフンしない?」

「心配でそれどころじゃないよ」

「お兄ちゃんのほうが元気ないみたいね。
 あんまり寝てないんでしょ。だいじょうぶ?」

「俺は鍛えてるから平気だよ。
 それより人の心配してる場合か?」

「それもそうね」

着替えを着せられ、愛用のクラシックな水銀体温計を脇にはさみました。

「夢の話、聞いてくれる?」

「悪い夢だったのか?」

「ううん、とてもいいゆめ。妹に会った」

お兄ちゃんは明らかにぎょっとしました。

「そんな顔しないで。頭がおかしくなったんじゃないから。
 妹というのは、ネットはじめてからできた友達。
 とてもわたしに似てるの。病歴も、考え方も、好きになった人のタイプも。
 こわいぐらいだった。こんなに似た人が、世の中にいるなんて、って。
 すぐに仲良くなった。わたしを『お姉ちゃん』って呼んでくれた。
 ホントの妹みたいに思ってた」

「ネットで友達ができたのか……よかったな。
 パソコン勧めてよかったよ。で、その子と夢で話したのか?」

「うん。実際に会ったことはないんだけど、その子の友達から容姿を
 聞いてたから、ちゃんと顔が見えたよ。ふしぎだね。
 会えてよかった。その子、先月死んじゃったから」

「……それも、夢の中の話、か?」

「死んだのは本当。わたしと同じ病気だから、急に亡くなることない、
 って思ってたんだけど。
 腎炎じゃなくて、血液の病気。お兄ちゃんも、よく知ってるでしょ?」

お兄ちゃんは、返事をしません。呆然としているようでした。

「夢のなかで、わたしは道を歩いてた。
 黒いドレスみたいな服を着て。
 なんのために歩いているのか、自分でもよくわからなかった。
 目の前を、霊柩車がとおるの。
 それで、ああ、これからお葬式にいくんだ、ってわかった。

 会場につくと、知らないひとばっかりだった。
 でも、白い服を着た、その子を一目見てわかった。
 妹のdだって。彼女もわたしを見て、すぐにわかった。

 あいさつはいらなかった。
 わたしはそばにいって、ほほえんだ。dもにっこりした。
 お葬式なのに、笑うのはまずいかな、と思ったけど。

 すごくキレイな子だった。
 透けるみたいに色が白くて、黒髪を伸ばしてた。
 ぱっちりした瞳が吸いこまれそうなぐらい深くて。
 彼女、ちっとも自慢しなかったけど、わたしより胸が大きくて、
 頭もよかったんだよ。まだ17だった。

 わたしはおくやみを言おうとして、困っちゃった。
 だって、だれのお葬式なのか、聞いてなかったから。

 『d、ごめん、こんなこと訊くの、恥ずかしいけど、誰のお葬式?』

 『お姉ちゃん、知らないで来たの?』

 わたしは小さくなっちゃった。dは、困り顔で教えてくれた。

 『これ、わたしのお葬式なの』

 『え? でも、あなたここにいるじゃない』

 なんだか、とてつもなくおかしな感覚だった。

 『ごめんなさい。でも、eさんが心配で』

 eさんというのは、妹が好きだった人のこと。
 見ると、お兄ちゃんに似た感じだった。
 脱け殻になったみたいな顔してた。

 『eさんのところにいかなくていいの?』

 『彼にはわたしが見えないの』

 dは、哀しそうにうなだれた。
 わたしはなんといって慰めたらいいかわからなかった。
 お互いに、あんなに好きあっていたのに。

 『彼、お姉ちゃんからも元気づけてあげてね』

 『……彼からメールもらったよ。
 手術の前に、dへの伝言たのんだから。
 dが、わたしのことをなんにも教えてくれない、ってこぼしてた。
 ヒミツだ、って約束したけど、彼にまでヒミツにすることなかったのに』

 『だって……お姉ちゃん、約束守れない子はキライだ、って言うから』

 『ごめんなさい。板挟みになって、つらかったでしょ?
 でも、彼はわたしとはメル友にはなれないって。
 わたしがあなたと重なってしまうんですって』

 『お姉ちゃん、そろそろ時間みたい』

 『もう? せっかく会えたのに』

 『うん。お姉ちゃんにお別れが言えてよかった』

 『また会えるんでしょ?』

 『会えないほうがいいよ。お姉ちゃんには、まだ早いから』

 『なんのこと?』

 『さようなら、お姉ちゃん』

 『またね、d』

 dは、ほほえみながら、透明になっていった。
 せっかく初めて会えたのに、少ししか話せなかったことが残念だった。
 どういうわけか、体のなかが熱いのに、背中が冷たかった。

 奇妙な感覚にとまどっていると、お兄ちゃんに起こされたの。
 夢はこれでおしまい。もっと見ていたかったけど」

お兄ちゃんは、しばらく何ごとか考えているようでした。

「どうかした?」

「お前、大丈夫なのか?」

「なにが? 言ったでしょ。気分いいって。なんだかふわふわするくらい」

「とっくに熱計れてるだろ。見せてみろよ」

体温計を抜いてさしだすと、それを見たお兄ちゃんが目を丸くしました。

「おい! 39度3分もあるじゃないか!
 これで平気なワケないぞ」

「え? そんなに? おかしいね、気分はいいのに」

「とにかく薬だ薬」

わたしは先にトイレに行きました。
意識はしっかりしているのに、足がふらつきます。

戻ってきたわたしはベッドにうつぶせになって、お尻をあげました。
お兄ちゃんは台所にいき、座薬をもってきました。
最初はどきどきしましたが、何度も使っていると慣れたものです。

お兄ちゃんは座薬にベビーオイルを塗って、入れてくれました。
お尻をさげて、1分ぐらいそのまま押さえてくれました。

「やっぱり病院いったほうがいいんじゃないか?
 歩けないんだったらおぶってやるから」

「歩けないこともないけど、人混みに出ていくのは気が進まないな。
 おしっこ採るから、もって行って。
 先生に話したら、抗生物質だしてくれるはず。
 劇的に効くよ」

「だったらなんで最初からそうしないんだ?」

「今までに何種類も試してるから、今度飲むのはきっと強力なやつ。
 副作用も強烈だと思う。たぶん、今より気分が悪くなる」

「仕方ないだろう?」

「熱がぶりかえすんじゃ、仕方ないね。
 尿検査の結果が悪かったら、入院ということになるけど、
 そうでなかったら、病院でもできることはあんまりない。
 せいぜい点滴したり注射したりするぐらいかな?
 今でもイオン飲料やビタミン剤余分に飲んでるし、
 たいして変わらないよ。家でゆっくりしていたい」

「そうか……じゃ、病院にいって、ついでに買い物もしてくる。
 着替えやシーツの替えが足りなくなりそうだ。
 大人しく寝てるんだぞ?」

「うん」

お兄ちゃんを送り出して、わたしはパソコンの電源を入れました。

「今のうちにタイプしておかないと、忘れちゃうもん」

そろそろ、お兄ちゃんが帰ってくる時間なので、おしまいにします。

座薬のおかげで、熱は36.8℃に下がりました。
入院と言うことになったら、当分アクセスできないと思います。
万が一、このHPや掲示板のアカウントが抹消されることがあっても、
必ず帰ってきますので、気長に待っていてください。
ここのHPが消えたら、たまに抽出係さんや90℃さんのHPをチェックしてください。
入院を免れたら、たぶん今夜には日記を更新できると思います。

●連載番外編・妖精のわすれもの●
2002年1月12日(土)14時01分

汗をかいて目がさめる。着替える。トイレに行く。お粥を食べる。クスリを飲む。寝る。
繰り返しのなかで、ベッドの上の小宇宙に閉じこめられたような気がしてくる。
ふだんしていないことをしてみたくなる。

というわけで、柄にもなく詩を書いてみました。初めての詩です。


妖精のわすれもの

大釜で煮られて
肉も 筋も 血も たましいも
とけていく

なにも のこらない
のこるとしても それは たましいじゃない
いたずらな 妖精の わすれもの

さえざえとした 白い骨が
あなたの貌を おもわせる

あなたは 逝って
わたしは のこった

あなたは だれも うらまず
わたしは 神を 呪う

わたしは 生きていて
どこにもいないあなたに なぐさめられる
それが あなたの わすれもの

(未完)


異常なイメージですが、熱に浮かされて見たということで、許してください。

●連載番外編・桜の木の下で1●
2002年4月4日(木)21時20分

このところ連載を書いていて鬱気味なので、たまには番外編を書いてみます。
先週の同窓会のお話です。

その日わたしは、出かける前にしばらく悩みました。
どんな恰好をしていこうかな、と。

結局、少し気合いを入れてお化粧して、イヤリングを着けることにしました。
詮索されそうなので、指輪は外しました。

目的地の駅を降りて、待ち合わせ場所を目で探すと、
すでに数人がたむろして談笑していました。その中に、R君が居ました。

「××さん、久しぶり。髪、伸びたね」

R君がわたしに気づいて、先に声をかけてきました。
口べたはすっかり治っているようでした。

「R君、お久しぶりです」

続いて他の元クラスメイトたちも挨拶してきましたけど、
困ったことに、覚えている名前と顔が一致しません。
わたしは密かに冷や汗をかきました。

R君が腕時計に目をやって、言いました。

「そろそろ移動しようか。今日は雨にならなくてよかった。
 0次会はお花見だからね」

R君の案内で、公園までぞろぞろ歩きました。
わたしはそのあいだ、R君の隣を離れませんでした。
他の名前のわからない人とは、話を合わせられないと思ったからです。

わたしは声をひそめて、R君に囁きました。

「R君」

「なに? ××さん」

「実は……クラスメイトの名前と顔が一致しないの。
 こっそり教えてくれると助かるんだけど……」

R君は軽く笑って答えました。

「オッケー。みんなけっこう面影残ってるんだけどな。判らなかった?」

「……覚えているのは、R君と、担任の先生ぐらいかな、たぶん。
 ところで、同窓会の案内状、どうしてわたしの住所がわかったの?」

「Uさんから話聞いてない?」

「Uが?」

「卒業アルバムの住所に出して返ってきたから、困ったよ。
 ××さんはUさんと仲が良かったでしょ?
 Uさんに連絡とって、君の住所聞き出すのはけっこう大変だった」

「わざわざそんな手間を?」

「話したいことがあったからね」

「なに?」

「それはまた後で」

公園ではすでに、大勢の人がお花見をしていました。
元クラスメイトの1人が、場所を取っていました。

周りの花見客が騒がしくはありましたけど、少し風があって、
舞い散る桜が綺麗でした。

レジャーシートに座ると、R君がジュースとお菓子を持ってきました。
R君は幹事らしく、みんなの間を回って世話を焼いていました。
わたしと違って、社交性を身に着けたんだな……と思いました。

R君は缶ビールのプルタブを引いて掲げ、乾杯の音頭をとった後、
わたしの隣に来て腰を下ろし、あぐらをかきました。

「××さんは、今年はもうお花見した?」

「うん、少し前に。夜桜だけど」

「夜桜もいいね。ここももっと静かだといいんだけど」

「R君は? 彼女とお花見した?」

沈黙が流れて、R君の顔を見ると、R君はまだ桜を見上げていました。

「彼女とは……2年前に別れた」

(続く)

●連載番外編・桜の木の下で2●
2002年4月5日(金)20時00分

「え? ……なにか、あったの?」

つい、尋ねてしまいました。R君は、寂しく笑うように言いました。

「まぁ……しょうがなかったんだと思うよ。
 大学で俺1人こっちに来て、めったに会えなくなったからね。
 離れていると、気持ちも離れていくのかな……」

「…………」

「変なこと言ってごめん。気にしないで」

やがて、1次会の始まる時間が近づいてきました。
1次会の会場は、少し歩いたところにある小さな居酒屋でした。
2階の座敷が、同窓会の会場として貸し切られていました。

だんだん人数が増えてきました。
どういうわけか、わたしは元クラスメイトの顔と名前が一致しないのに、
新しく来た元クラスメイトはわたしをすぐに見分けました。

わたしはR君の隣に座っていました。
元クラスメイトが座敷に上がってくると、役者に台詞を教える黒子のように、
R君が名前を耳打ちしてくれました。

女子の1人が、わたしに話しかけてきました。
すっかり変わっていて、名前を聞いても昔の顔と結びつきませんでした。

わたしは挨拶するだけで緊張してしまって、
料理の味がよくわかりませんでした。

みんなの席を回っていたR君が、隣に戻ってきました。
コップが空っぽでした。わたしはビール瓶を手にとりました。

「R君、お酌しようか」

「ありがと。××さんは?」

わたしのコップは、まだ半分しか減っていませんでした。

「コップ1杯が限界だから……」

「もう顔が赤いね。ジュースかウーロン茶とってこようか」

「良いから、少しのんびりして」

R君はビールを味わうように飲んで、目を細めました。

「しかし、××さんも変わったね」

「そう?」

「うん、昔より、雰囲気が柔らかくなった」

わたしは首をかしげました。

「これでも、すごく緊張してるんだけど……」

「昔だったら、いちいちみんなに挨拶しなかったじゃない」

「……だれもわたしに話しかけなかったから……R君以外は」

「うーん……みんな気後れしてたんだと思うよ。
 ××さん、あの頃はすごく大人の雰囲気で、超然としてたから」

「それは、誤解だと思うけど」

「そうだね。
 でも……やっぱりあの頃は、どこか張り詰めたようなところがあった。
 僕らのことは眼中にない、って感じでさ。気に障ったらごめん」

「……わたしも、いろいろなことがあったから……。
 R君も、ずいぶん変わったね。大学ではモテるでしょ?」

「そんなこと、無いよ……まぁ、友達は増えたけどね。
 深く付き合う気にはなれなくてさ」

「彼女さんと別れたせい?」

R君は苦笑しました。

「……そうかもね」

「なーに2人でこそこそ話してるんだ?」

酔っ払った男子が、話を邪魔してきました。

(続く)

●連載番外編・桜の木の下で3●
2002年4月6日(土)17時00分

1次会が終わると、お店の外の道に、元クラスメイトたちがたむろしました。
いくつかのグループに分かれて、2次会の相談をしています。

離れて見ていると、カラオケ組と飲み直し組に別れるようでした。
カラオケは苦手だし、これ以上飲むのは危険です。
わたしは帰ることにしました。

黙って立ち去るわけにもいかないので、別れの挨拶をしようと思いました。
……タイミングがうまく計れません。わたしが右往左往していると、
R君が歩み寄ってきました。

「××さん、2次会はどうする?」

「帰ります。少し酔っちゃった」

「そう……残念。ちょっと待ってて」

R君はさっさとグループに戻って何事か話していました。
やがて1人でまたやってきました。

「駅まで送るよ」

「いいの? R君、幹事なんでしょ?」

「幹事の責任は1次会までさ。もうみんな大人なんだから、
 2次会は自由行動」

「それもそうね」

暗くなった道を、R君と2人、肩を並べて歩きました。
R君が言いました。

「公園に寄っていかない? 夜桜が綺麗だと思うよ」

「うん」

公園にはまだ花見客が残っていましたけど、数は減っていました。
少し風がありました。
舞い散る桜の花びらが、ちらちら降る雪のようでした。

誰もいない桜の木の下で、R君が立ち止まりました。
R君は桜の枝を見上げながら、言いました。

「9年前に言えなかったこと、いま言いたいんだ」

「9年前?」

「卒業式の続き」

「……」

視線が合いました。R君は小首をかしげて、懐かしそうに告げました。

「君は……僕の初恋だった。好きだった」

わたしは馬鹿みたいに、R君を見つめるだけでした。

「……ああ、返事は要らない。もう、終わったことだからね」

「終わった?」

「好きだったのは本当だけど、9年前のことだもんね。
 あれからずっと離れていて、今さら言ってももう遅いよ。
 あの時言いそびれて……ずっとケリをつけたかったんだ」

R君は安心したように、ほうっとため息をつきました。

「僕はいまの君のことを、なんにも知らない。
 あの時だって知らなかったのは同じだけど……。
 ゼロだ。
 もしよかったら、ゼロからもう一度、友達になってくれないか?」

「うん。
 R君は、わたしに初めてできた友達だと思ってた」

ゆっくり駅まで歩いて、改札口で別れました。
R君が手帳をちぎって、電話番号とメールアドレスを書いてくれました。
わたしはその手帳に、電話番号とメールアドレスを書きました。

「R君はこれからどうするの?」

「2次会に合流するよ。みんな待ってるしね」

「それじゃ、お休みなさい」

「またね」

R君は背を向けて、走っていきました。
わたしは、同窓会に来てよかった、と思いました。


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